♯店主私物
- 宗沢香音

- 4月17日
- 読了時間: 3分
更新日:4月26日

放蕩書店・店主である宗沢香音が愛読してやまない本を紹介する特集です❣️
どれも生きるために必要だった本ばかり。
一人の嗜好が誰かの愉しみにつながることを信じて隠れた名著を紹介します。
※お取り扱い本は全て新刊です。
・古井由吉翻訳集成/ムージル、リルケ
古井由吉翻訳集成/ムージル、リルケ
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遅れてきた新人と呼ばれた古井由吉。
彼は作家になるまで、ドイツ語の先生・翻訳者として生業を立てていました。
彼が深く取り組んだ作家の一人が、ムージルです。ねばりつくような究極的な愛情を書く作家であり、店主も他の作品『三人の女(トンカ)』を愛読しています。
何度読んでもいい。声に出して読んだら、さらにいい。
本書に掲載されているのは、「愛の完成」「静かなヴェロニカの誘惑」。
「愛の完成」は中年の夫婦が自分たちが出会う前にそれぞれ出会ってきた男女に嫉妬にも似た感情を膨らませていくお話で、内容こそ違えど、古井由吉の『杏子』の筆致を強く連想させます。半ば元ネタのようなところがあるのだと思いますが、『杏子』にはムージルにはない、日本の湿気や暗さまであり、洞穴の感覚は中期作品の『栖(すみか)』にも残留し古井の作家性にも醸成していきます。
ドイツ語を日本語へと移し替え、言葉を酷使させるなかで、彼はいかにして自らの日本語を獲得していったのか? 村上春樹にせよ、池澤夏樹にせよ、作家の翻訳物を読むということは、書き手解釈に新しい視座をもたらします。
・重力と恩寵/シモーヌ・ヴェイユ
重力と恩寵/シモーヌ・ヴェイユ
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家出したときにポスティングのバイトをやって身銭を稼いでいたのですが、休憩時間に公園で開いていたのが『重力と恩寵』でした。困難の中にいるとき、自分の体はだんだん重くなっていきますが、同時に神聖にもなっていく。
「ボロボロになってく 神様になってく君が透明な銃 放つ自由」
TOKYO BLACK HOLE /大森靖子
ダメなところで生まれて頑張ってもその先ぜんぜん辛くて、頑張ってやっと人並み以下の人生しか手に入らなかったな。狭い部屋で思うんですけれど、辛かったことを対価にも代償にもせず、かわいそうの文脈で自分を語るのを我慢して、ストイックに生きた分だけ、向こうで普通に笑っている人の持っている苦労とか辛さとか眼に見えるようになったので、もっと分厚くて神聖で、気迫のある、天使の羽が生えた、ただの人間になっていきたい。ヴェイユを読むと、そう勇気づけられます。
・うわさの壁/李清俊
うわさの壁/李清俊
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