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うわさの壁/李清俊

うわさの壁/李清俊

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李清俊(イ・チョンジュン)。
私の推し作家である。
 韓国風土の中を生きる人々を題材にした作品群では、社会派のエンタメ作品でありながら、国も人種も超えるような人間問題を扱う。私は遠藤周作をこよなく愛らしい書き手と捉えているが、それは単に書ける作家だからではなくて、この作家のやることなすこと、手明かししながら読めるからで、つまるところ、書き手として非常に人間くさいのだ。 
 李清俊は韓国の遠藤周作と紹介するのがわかりやすいだろう。言論統制を受けた小説家、ハンセン病棟に赴任した男、息子を拉致された母親などを扱い、克服できない不条理の鉱山から苦悩を掘り出し、丁寧に眺め、人間存在の光る瞬間を確実に捉えて描く。作品は個人的な体験を描いたものでありながら、読み手の心の弱い部分を強く揺さぶって離さない。
 『うわさの壁』は、自分の仕事に意義を見出せない文芸誌編集者が、ある日突然現れた謎の男に取り憑かれるように呑み込まれていく物語である。男について語られる噂は霧のように広がり、真実に近づくほど、主人公は「人が語らずにいられないもの」に触れてしまう。やがて男の核心に近づくにつれ、語らずにはいられない衝動――その自己陳述の強迫に触れることになる。当時の韓国社会の空気を背景に、どんな目にあっても書き続ける作家の衝動を描いた一作である。
 
【♯店主私物】
放蕩書店・店主である宗沢香音が愛読してやまない本を紹介する特集です。どれも生きるために必要だった本ばかり。一人の救いが誰かの希望につながることを信じて隠れた名著を紹介します。※お取り扱い本は全て新刊です。

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光が問い詰める
嘘をつくな
お前はどちら側なんだ

夜道に突然現れ、助けを求めてきた謎の男。
精神病院の医師は男のトラウマの原因を究明できると豪語するが、雑誌編集長の「私」は、男の書いた小説から朝鮮戦争の陰惨な記憶を探る―。
独裁政権下の韓国を舞台に人間の本質を追求し描いた李清俊の初期代表作。

【著者】李清俊 (イ・チョンジュン) 
1939年、全羅南道 長興に生まれる。ソウル大学ドイツ文学科卒。
1965年に短篇「退院」で『思想界』新人文学賞を受賞して以来、四十数年の間に多数の作品を出版した。
長編小説に『あなたたちの天国』『低きところに臨みたまえ』『書かれざる自叙伝』『祝祭』『神話の時間』、小説集『星をお見せします』『うわさの壁』『自叙伝を書きましょう』『西便制』『花は散り川は流れ』『失われた言葉を求めて』などがある。
朝鮮戦争や独裁政権、産業化が進む経済成長の時代に翻弄される人々を見つめつつ、自由を抑圧する社会の構造を象徴的な手法で描いたものが多い。後期には人間の本質を探究する傾向を強め、実存主義的と評された。
東仁文学賞、李箱文学賞、大韓民国文学芸術賞、大韓民国文学賞、怡山文学賞、二十一世紀文学賞、大山文学賞、仁村賞、湖巌賞などを受賞。
2008年、満68歳で肺がんにより死去した。葬儀は文人葬として行われ、死後に大韓民国金冠文化勲章が授与された。

【訳者】吉川凪 
大阪生まれ。仁荷大学国文科大学院で韓国近代文学専攻。文学博士。
著書に『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ─ 高漢容と仲間たち』、訳書として『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、パク・ソンウォン『都市は何によってできているのか』、チョン・セラン『アンダー・サンダー・テンダー』、呉圭原詩選集『私の頭の中まで入ってきた泥棒』、チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』、朴景利『完全版 土地』、崔仁勲『広場』などがある。
金英夏『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。
<参考URL:https://chekccori-bookhouse.com/product/うわさの壁/11454/>

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