当事者は嘘をつく/小松原織香
「私の話を信じてほしい」哲学研究者の著者は、傷を抱えて生きていくためにテキストと格闘する。自身の被害の経験を丸ごと描いた学術ノンフィクション。
「私の話を信じてほしい」哲学研究者が、自身の被害経験を丸ごと描く。性被害ほど定型的に語られてきたものはない。かねがねそれでは足りない、届かないという思いを抱いてきた。本書には、当事者と研究者、嘘かほんとうかをめぐって幾層にも考え抜き、苦しみ格闘したプロセスが描かれている。これこそ私が待っていた一冊である。――信田さよ子ジャック・デリダ、ジュディス・ハーマン、田中美津、渡辺京二らのテキストを参照しつつ、新しい語りの型を差し出そうとする試み。
第1章 性暴力と嘘第2章 生き延びの経験
第3章 回復の物語を手に入れる
第4章 支援者と当事者の間で
第5章 研究者と当事者の間で
第6章 論の立て方を学ぶ
第7章 私は当事者ではない
第8章 再び研究者と当事者の間で
第9章 語りをひらく
【本の感想】
自身性被害の当事者である著者が、当事者と研究者の境界、当事者の言葉を奪いコントロールしようとする「支援者」との闘いと当事者同士の葛藤と救済、加害者を赦さなければ自分自身が壊れてしまう恐ろしさの中で生み出した言葉が突き刺さるすごい本だと思います。
壮絶な当事者運動を展開した青い芝の会や田中美津の言葉から、「わかってほしい」という気持ちより当事者として支援者と闘うことを選ぶ著者の決意の強さと、加害者を赦すよりも「支援者」「研究者」を赦すことの方が難しいとしながらも、水俣の患者運動の中で「それが不可能ではない」ことを知ることで世界の見方が変わる、という希望。
当事者研究が自己や身内の小さな人間関係に矮小化している、という批判には説得力を感じます。当事者研究は、企業や会社組織が、社員を人間関係がうまく行かなくてもなんとか働き続けられるメンタルに鍛え上げていく方法と化していくのではないか、という危惧はずっと持っていました。
いわゆる「支援者」という仕事をしている人はぜひ読んでもらいたい。
伊丹高さん
参考URL:https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480843234/


















